ミソハギ踏切で待ってるをじっくり遊んで徹底レビュー！

初恋の人の死の謎に迫る謎解きとホラーが融合したノベルゲーム

「ミソハギ踏切で待ってる」はストーリーパートと脱出パートを交互に繰り返しながら進めるノベルゲームです。

アプリはsweet ampouleという4人の自主制作チームで作られた作品ですが、自主制作とは思えないクオリティと作り込まれた世界観が魅力的です。

「自分は人を好きになれないかもしれない」と、恋愛につまずいた主人公「蛍」が、ひと夏の経験を通して少しずつ成長する姿を描いていきます。

ホラーノベルと述べたものの、最後はとても切なく、そして温かい気持ちになれる作品でした。

1人の少女との再会

父の実家である「横溝町」へ帰省した蛍は、子どもの頃よく遊んだ場所を散策したり、友人と再会します。

その時ふと思い出した初恋の人の家を尋ねると、幼い頃の面影を残した少女と再会するのですが、これが全ての始まりとなるのでした。

初恋の人である小夜の家へ何度か通っていると、小夜の姉である瑞穂に「もうここへは来ない方がいい」と言われてしまいます。

その直後突然起こるホラーと、閉じ込められる恐怖はかなり怖いです。

小夜の家からの脱出

瑞穂の異変をきっかけに小夜の家に閉じ込められてしまいます。

脱出パートでは、ヒントや謎解きの解答を見られるので脱出ゲームが苦手な方も安心です。

何かに追われたり幽霊が突然現れるというホラー要素はないので、怖かったのは最初に閉じ込められた時だけでした。

ストーリー全体を通して、自分とは何かというものを考えさせられるのも特徴的でした。

恋愛が上手くいかず、そもそも他人に興味を持てないことに悩みを抱える蛍は、横溝町でどう成長していくのでしょうか。

プレイ動画

関連ジャンル

とても悲しい様々な愛の形が描かれるストーリーに引き込まれる

ストーリーの合間で、帰省先として宿泊している赤崎家や、横溝町を探索できるので、丁寧に探索しましょう。

後述するやり込み要素に大切なものがたくさんあることもなのですが、何よりも横溝町の人たちとのふれあいが楽しいです。

キャラの濃い町の人たちの、様々なエピソードを聞くのも楽しみの1つでした。

重要なヒントをくれるウネ婆

探索中に必ず寄っておきたいのが神社です。

神社にいるウネ婆は、脱出パートの重要なヒントをくれるので、スクショを取るかメモをしておきましょう。

ウネ婆からのヒントを頼りに、小夜の家で起こる脱出パートをクリアできるのでとても頼もしい存在です。

心中を選んだ小夜一家の想い

「初恋の人と再会する」と述べましたが、小夜の一家は3年前に一家心中しているのでした。

つまり、蛍が会ったのは小夜や瑞穂の幽霊ということになります。

さらに、小夜や瑞穂が暮らす家はパラレルワールドにあり、蛍以外は入ることが出来ないようです。

脱出パートは何度か繰り返されます。

小夜の家族である「天野家」はなぜ心中に至ったのか、それぞれの想いとは何かが脱出パートで少しずつ明かされていくので続きが気になって、時間を忘れてしまいます。

様々な形の愛

「ミソハギ踏切で待ってる」のストーリーで描かれるのは、「様々な形の愛」だと感じました。

大切だからこそ身を引く、もしくは歪んだ愛の形を受け止めるなど、複雑に絡み合った状況にとても考えさせられました。

それぞれが大切に思っていたのに、すれ違ってしまう切なさもまた引き込まれる魅力です。

ホラー要素があるとはいえ、脱出パートで見せられるのは他でもない「家族愛」です。

少し歪んですれ違っているかもしれませんが、いろいろな愛の形があるのだと、小夜一家の記憶を通して感じられます。

そして脱出パートを通して、少しずつ考え方が変わっていく蛍の成長にも注目して欲しいです。

事前予約中のタイトル！

ホラーとはかけ離れたやり込み要素も満載なのが魅力的

ハーレムも楽しめる

ここまで述べた、ホラーや家族愛といったシリアスなものとは真逆の要素が詰まっているのも魅力の1つだと感じます。

脱出パートはあくまでもパラレルワールドであり、日常としてある横溝町は、田舎ののんびりした良い町です。

東京での生活に疲れた蛍は、様々なキャラの濃い町の人たちとの関わりの中で、少し人に興味を持てるようになっていくのでした。

そんなのんびりした日常の中、蛍は従姉妹3人やその友人など、様々な女性からアプローチを受ける羨ましい展開もあります。

恋愛アドベンチャーとして、誰かを攻略まではないのですが、様々な女性にモテることで確実に怖さが軽減されるのでありがたかったです。

個人的には、一途に想い続けていてくれる祈里に少し心が揺れました。

実績開放のための探索

「ミソハギ踏切で待ってる」には、様々なやり込み要素が詰まっています。

まずは、横溝町にたくさん生息している野良猫たちの発見です。

全ての猫に出会うと、「横溝ねこ愛会」というサブストーリーが開放されます。

野良猫同様、某夏休みゲームのように昆虫の写真を撮るやり込みもあります。

こちらもコンプリートすると、「虫ビギナー認定！」というサブストーリーが開放されます。

ご紹介した以外にも、様々なやり込みにより開放されるサブストーリーが複数あるので、横溝町マスターを目指して探索してみるのも楽しいです。

時折現れるシュールな笑い

ホラーを緩和してくれるのは、恋愛や人々とのふれあいだけではありません。

時折、しかも突然現れるシュールな笑いに、シリアスな気持ちを吹っ飛ばされて笑ってしまったりもしました。

横溝町の人たち全員が、人間としてとても魅力的なのも世界観に引き込まれる要素だと感じます。

シュールな笑いは、閉じ込められた小夜の家でも突然起こります。

怖いのか面白いのか混乱してしまいますが、ホラーゲームが苦手な方にも怖くなく楽しんで欲しいという配慮が随所にあるのが嬉しいです。

悲しくて温かい家族愛や、横溝町の人々ののんびりしつつ、田舎特有の近い距離感の中で変化していく蛍の心境は共感できる方も多いのではないかと思います。

ノベルだけでなく、脱出パートがあったりと緩急があり、飽きさせないのがとても良いです。

後半は脱出パートがもどかしくなるほど、世界観に引き込まれてしまいました。

「ミソハギ踏切で待ってる」は、ノベルゲームながら脱出ゲームやコレクション要素など、文章を読む以外の楽しみも大きい作品でした。

ミソハギは、「禊萩」と書くのだそうです。

人が抱える悩みや後悔、それをどう乗り越えるのかが描かれるストーリーが最大の魅力です。

4人それぞれが「禊ぎ」の想いを抱えて亡くなってしまった、悲しい心中事件を軸に広がる世界観をぜひ体験して頂きたいです。